街路・道路景観
「街路」と「道路」
厳密な違いはないが、「街路」は、都市部の歩行者の多い道。「道路」は、それ以外の、車が主体の道。広義の「道路」は「街路」を含む
街路・道路景観における内部・外部景観
道路景観においては内部・外部景観ともに留意しなければならないが、街路景観においては基本的に外部景観はない
街路・道路景観の構成要素
道路
・道路本体
・道路植栽
・道路付属物(防護柵など)
・道路占用物(電柱、ストリートファニチュアなど)
沿道
・建築物
・広告看板
・敷地囲障
・耕作地
・樹林
・空地
遠景
・自然要素(山など)
・人工要素(塔など)
人間活動
・歩行者
・自転車
・自動車
地下部
・交通施設(地下駐車場など)
・商業施設(地下街など)
・エネルギー・通信施設
・下水施設
変動要因
・季節
・天候
・時刻
「囲障」とは
隣り合った建物の所有者が敷地の境界上に設けた塀・柵などの囲い
街路の線形
・平面線形
・縦断線形
平面線形
・直線
・曲線
・折線
直線街路の特徴
沿道建築の統一により整然とした街路空間をつくりだせるが、反面、単調な印象になりやすいので気をつける必要がある。幹線道路においては軸線上にアイストップとなる構築物を置くことによってヴィスタ・アイストップ型の印象的な街路景観を形成し、都市の顔とすることができる
曲線、折線街路の特徴
街路上を移動することによって豊かなシークエンス景観を体験することができる。回遊式庭園の苑路、城下町の筋違い、神社の参道などに利用され、奥行の深さを演出していた。目抜き通りで使うべきではなく、繁華街や裏通りなどで用いるべき。沿道建築物のファサードに意識が集中しやすく、沿道土地利用との関連性が強い景観となる
縦断線形の街路の特徴
・上り坂は、坂を上りきった場所で展開する新たな眺望が期待され、視線は頂上付近にある対象に注がれる。そのため頂上にあるランドマークが強調されやすい
・下り坂は、眺望が得られる格好の場所であり、昔から都市の眺望点として人々に強い印象を与えていた
・階段は、独特の歩行空間を演出することができる
街路空間の骨格を決めるプロポーション
・歩車道幅員比
・幅員沿道建築高さ比(D/H)
・幅員延長比(D/L)
「歩車道幅員比」とは
歩道と車道の幅員の比。歩道の割合が高いと親密な雰囲気の遊歩道的な感が強くなり、小さいと歩行者に窮屈な印象を与える
D/Hの留意点
・大通りのように格調の高さが重要となる街路では、D/H=1~2程度の空間がよい。その際、建物の壁面線と高さを整えることが重要である
・D/H>3となる街路は茫洋とした空間となるので、複数列の並木を設置するなど横断方向の分節化を図るか、モニュメントの設置により空間を視覚的に引き締めることが大切である
・裏通りや横丁といった盛り場を構成する街路では、D/H<1の親密で居心地のよい空間を演出する
D/Lの留意点
・大通り、目抜き通りといった広幅員の街路では、1km程度(2kmまで)に分節されることが好ましい。また、歩行者系の街路では、400~500m(1kmまで)が好ましい
・広幅員の街路でD/Lが1/15程度と大きな値となる場合は、広場的な印象の街路となる
・中心市街地の目抜き通りでは、D/Lは1/30内外が好ましい
・街路幅員の感覚は並木の存在に影響される
・街路の分節化とはいえ、歩道橋、高架道路、幹線道路の交差によって街路がぶつ切れになる状態は好ましくない
街路網の配置における重要な観点
・都市の秩序付け
・都市の顔づくり
代表的な街路網パターン
・格子状パターン
・格子+斜路状パターン
・放射状パターン
「都市の顔」となる街路の配置の留意点
・遠景の要素の取込み
・都市の重要施設の前面への配置
・都市計画、建築計画との一体性
・歴史的文脈の尊重
・明確に広い幅員の採用
街路の性格
・規格
・場所性(格)
・地域性
街路の格による分類
・目抜き通り(都市のシンボルとなる街路)
・繁華街
・表通り
・裏通り(筋、小路など)
・横丁、路地(庇合、突き抜きも含む)
片町
・水辺の道(河畔、湖畔、濠端、海岸の道)
・公園脇の道
「庇合」とは
ひあわい。両側の屋根のひさしが重なり合っているような狭い路地
「片町」とは
道の片側だけに建物が並んでいること
街路の格と景観設定
目抜き通りでは非対称の横断面構成をとったり、そこに生活臭のある道具立てを持ち込むと、くだけた雰囲気となり、全体の品格が落ちてしまう。逆に、裏通りにまで格調の高い道具立てを持ち込むと、親しみやすさが失われてしまう。都市にはさまざまな格の街路が存在し、それらが格に応じた景観を呈することで都市に多様性と奥行を与えるのであり、これを忘れると平板な味気ない都市になってしまう
道路のロケーション(路線選定)の重要原則
・重要な景観資源の存在する場所に道路をロケーションしない
・重要な視点と考えられる場所から不可視となる領域に道路をロケーションする
運転心理に配慮した道路の線形設計
・線形の急変を避ける。直線と円曲線の間にクロソイドなどの緩和曲線を挿入する
・ステップ(手前と先が見えてその間が不可視となる状態)を避ける
・平面線形と縦断線形の調和に配慮する
・ブロークンバック(曲線間に短い直線を挿入するとその部分が逆に屈曲しているように見える状態)を避ける
道路構造
・平面
・土工(上下線分離構造を含めた切土、盛土構造)
・高架構造
・トンネル
・覆道構造
・掘割構造
道路構造の選択のポイント
・長大法面の回避
・生態系の保全
・土工量の減少
・個別構造物の景観設計の自由度の増加
・沿道土地利用に対する配慮
「法面」とは
切土や盛土により作られる人工斜面