景観の計画・設計
「景観計画」と「景観設計」
「景観計画」は、施設や地域を対象に景観のあるべき姿とそれを実現するための方法やプロセスを理論的に提示するもの。「景観設計」は、景観計画で定められた景観のあるべき姿を実際の形として実現する作業
景観計画の対象
・場:地域、地区などの広域エリア
・物:道路、橋梁などの施設
・人:地域住民の合意を得るためのイメージ作り、啓発
・関係:対象同士、あるいは視点と対象の関係性
景観計画の要件
・公共性、論理性
・実行性
デザイン
・直接的デザイン
・間接的デザイン
「間接的デザイン」とは
都市や地域において、全体としての景観的秩序をもたせ、統合するための仕組みのデザイン
景観設計の五原則(by 篠原修)
・応格の原則
・洗練の原則
・背景の原則
・めりはりと首尾一貫の原則
・他力本願の原則
「応格の原則」とは
機能的な格(例:道路の級種)、歴史などに応じた格へ配慮しなければならないということ
「洗練の原則」とは
数値計算から求められた寸法は生(なま)の形であるので、全体のバランス、プロポーションを見直して洗練された姿に仕上げていく必要があるということ。また、地域性を演出しようと名産品をモチーフにした稚拙なデザインがあるが、抽象化と洗練が必要である
「背景の原則」とは
主役と脇役の関係をわきまえなければならないということ
「めりはりと首尾一貫の原則」とは
事業実施、空間形成において統一した考え方が必要である。ただし、かえって面白味に欠ける景観になるおそれもあるので、要所にめりはりをつけることも必要である
「他力本願の原則」とは
景観は自然や土地利用者によって変化していくものなので、これら他者の力をいかに活用していくかが重要である
景観の計画・設計のプロセス
1.基本構想
2.基本計画
3.基本設計
4.実施設計
基本構想
・景観計画課題の抽出
・景観特性の把握
・景観資源の抽出
・景観テーマの設定
・計画目標の設定
・【物】機能計画の概要把握
基本計画
・ゾーニング
・施設配置計画
・【場】ゾーン別景観形成方針設定
・【物】構造形式、素材、形態の決定
・【物】修景方法の決定
基本設計、実施設計
・【場】個別施設の位置づけ、役割の決定
・【物】施設デザイン
景観テーマの設定
・すでに重要な主対象がある場合、施設/構造物はそれに従属させる
・まださほど重要な主対象がない場合、施設/構造物を既存の主対象と同質的に調和させる、あるいはコントラストによる新たなテーマをつくる
・まだ主対象がない場合、施設/構造物によって新たな景観テーマを創造するという積極性が求められる
「デザイン」とは
対象とする施設/構造物に求められる様々な機能の要請にこたえ、それらの機能を満たす実体を「ひとつの統一した良い形」にまとめ上げる行為
形
・広義:素材、大きさを含む
・狭義:素材、大きさを含まない
デザインの3要素
・形(狭義)
・大きさ
・素材(色彩、テクスチュア)
「地区計画制度」とは
一定の地区を指定して、建物の壁面位置や高さ、垣・柵の形状、最小敷地面積などの制限を、自治体が一般の規制に上乗せして規定することができる制度。1980年に制定
自治体による街づくりの今後の方向性
・景観条例をうまく運用し、実行性を高める方法
・行政に専門のコーディネーターを置く方法
・建築家を行政に取り込む方法